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ダイブ・バー No.26 - Hacchi-

2020/06/30 (Tue) 19:21:20

 優平と田口は、充血した目を瞬きながら、リサの住むシェアハウスの様子を窺うように見やると、どちらからともなく1978年製ダッジ・マグナムGTの分厚い鉄製の重く大きなドアをゆっくりと開けた。
 足を外に投げ出すように出すと、二人同時に深い息を吐きながら外に出た。

 二人は、スパニッシュ風の赤レンガとベージュ系に塗られた平屋の一軒家の前に仁王立ちになり、家の様子を窺うように、しばらくたたずむと、どちらかともなく、
「誰もいないみたいだね。 では、一服して待つかね~」 と、ドアを挟んで、置いてあるプラスチック素材で編みこんだチャコール色の椅子に座った。 
 「では、軽くパイプで吸いましょうかね」 と田口は、先ずは何やともあれいう風に、“マリーズボックス” と本人が呼んでいる小振の小箱を膝の上に乗せた。
 それはネイビーブルー色の紙製に特殊樹脂コーティングが施されたツールボックスのようだ。
 田口はその箱の上部の取っ手を二つに割るようにを開けると、きれいに並べてあるガラス製の円筒型容器群から一つ取り出すと、「パイナップル・ディゼルの気分かな~」 とおどけて語尾を上げ伸ばす。
 田口は同意の確認をするかのように優平を見つめると、その容器の上部を親指と人差し指で軽く圧をかけた。
 上蓋がぽ~んと小気味良い音をたてて浮いた。
 すぐさま、大麻草特有の香ばしい匂いが漂う。
 優平が目を閉じ、鼻を利かすように、その匂いを堪能すると、「甘みのなかにほのかに香る酸味が効いているところに、ほのかな草の匂いが混じって、嗅いだだけで軽く飛びますね」 と、頷きながらしきりに感心していた。
 田口は笑みを浮かべながら満足そうに頷くと、「でしょ~」 とまた、語尾を上げ伸ばしいうと、その容器から、一つまみすると、ガラス製の3インチパイプに大麻草を詰め、優平に、どうぞとばかり手渡した。

 雲一つない青い空を見上げる。 サングラス越しでも目を細めるほどの眩しさに目がくらむ。 何度か瞬きを繰り返すうちに、ダイヤモンドダストに似た空気中で無数に瞬く粒太陽光線は、行く先を阻むものは何もないとばかりに、容赦なく降り注ぐ。 
 ゆらっと身体がしなってるのかなしてきたかなと優平は怪訝な表情を浮かべると、何気なく田口の方を見やる。 
 田口はゆっくりと左右に揺れながら少し笑みを浮かべ、遠くを眺めている。

  
 田口が口を開く。 
 「あれは、ぼくがLAに着いて2週間ほどたった頃かな」 
 眩しそうに目を細め、少し間を取る。 
 「チャイナタウンにあるバーに、ドクターと呼ばれている東洋人で腕利きハスラーが居るといううわさを聞いて、8時ごろに様子を見るつもりで行ってみたんだ。 
あまり遅く行くのも怖い感じがしてね」 と、田口は優平に向かっておどけたようにすくんで見せた。
 「8時でもLAのチャイナタウンに足踏み入れたくないですねー」 
優平は警察物のドラマで、捜査のためにチャイナタウンに踏み込むシーンを思い出す。 
大麻草の効果か、リアリティのある想像になり心底すくみあがった。
 それを見ていた田口は、目をひん剥き、
「なにー 優平君。 今チャイナタウンに行っておどろおどろしい事でも想像していたんでしょう?! いいなあー そんなにハイになっちゃって!」 と、少し身体をしならせた。
 「それが案外そうでもないのよ。 そりゃ、どこの街のチャイナタウンも一種独特の雰囲気があって、中国語飛び交ってるイメージあるけど、いきなり首切られたりはしないわよ~ 入ったバーなんて、良きアメリカのバー、それはアメリカのどこの街でも一軒や二軒はありそうな、ジュークボックスがあって、ビリヤード台があって、長いカウンターバーがあってというやつよ」 と、そこまで一気に言うと、田口はボトルウォーターをごくごくとうまそうに飲んだ。
 優平は映画 『ハスラー2』 や他の映画に出て来る幾つかのバーを思い浮かべていた。 
 どれも、基本的に似通っていて、田口の言う通り、そこではカントリーやロックが流れ、バーカウンターには、キャメロン・ディアスみたいな大柄な金髪美人が大きな口角を上げ、「ハーイ」 と微笑を浮かべ、何する? とばかりに、片眉を上げる。 
 店の奥には、ビリヤード台があり、ジーンズにネルシャツを着たジェフ・ブリッジスみたいな、ひげ面の大男が、バドワイザーかなにかのビールをボトルで飲んでいる。
 「それで、その店行ってね、バーカウンターでビール注文してるときに、奥の方から、「ヘーイ ドクター・ヤス @*+#・・・」 という声が、奥の方から聞こえてきたのよ。 
それで、えっ?! ヤスってことは、日本人?! ということ?! って」
 「ヤスシ、ヤスヒロとかイエヤスという可能性も?!」
 「でしょう?! それで、ビールもって急いで奥の方に行ってみたわけ。 そしたら、長い黒髪をポニーテールにした彼がちょうど、キューを打とうとしている姿が目に飛び込んできたの」 
そこまで言うと、田口は芝居がかったように両手で口を押え、
「あたし、なにかデジャヴュか何かのような、ちょっと説明つかないような感情におそわれたの」
 「リョウさん、決まり過ぎていたのじゃないんですか?」 
優平はアメリカ留学来てからの経験から、大概のこの手の話、UFOや幽霊見たという顛末は、決まり過ぎていたということなのよね。 と、懐疑的に冷ややかな目で田口を見る。
 「ううん」 と田口は激しく首を左右に振り、
「あの頃はまだ、マリファナどころか一切のドラッグ未経験よ。 とにかく、奇妙なほどの既視感というものを味わったのよ。 それに彼には後光が差していたの。 男が男に一目惚れしたのよ」 
  

お元気ですか?! - Hinna

2020/04/25 (Sat) 22:08:26

FQGPのホームページから、掲示板や回答のページに移動しなくなって、みんなに心配をかけましたが、ようやく問題を少なくともここに書き込めるところまで解決しました。PC画面の拡大を100%にすると移動できる・・その後に戻しても大丈夫。ここまで解明したので、ご心配かけました!!!

さてコロナウィルスで窮屈な生活をしてると思うけど、大丈夫ですか?? みんな気をつけて、そして乗り越えて、世界中みんなでパーティーを目指しましょう!!!

ダイブ・バー No.25 - Hacchi-

2019/04/29 (Mon) 13:05:25

 リサは田口の渡米以前の話を聞いていて、日本ならどこにでもいそうな一億総中流家庭で田口という男は育ったのだなと思った。 

 父の茂は真面目に役所を定年まで勤め上げ、母の美奈子は専業主婦として家庭を切り盛りし、そして姉の遥子は出戻りという、微妙な立場ながら田口家の長女としての役割を務める。
その田口 了は長男で且つ末っ子の役割を田口なりに務め、家族に愛されて育ったのだと、彼の人柄からも垣間見える。

 リサはそんな田口家を羨ましいと思った。
自分は一人っ子で、父の壮一郎は、総合商社勤めで海外単身赴任が長く、年に一、二週間家に居る程度だ。
しかも、リサが壮一郎の赴任先に行こうとしても、危険度の高いアフリカの国ばかりが赴任地で、祖母の、のりこに至っては、コンゴ、トーゴやガボンだとか、何か怪獣でもいそうだから、絶対行ってはだめだと懇願される始末。
  それでは、「お父さんは、大丈夫なの?」 と、リサが祖母の、のり子に訊ねると、「そりゃあ、お父さんは、  
仕事だから大丈夫よ」 と、太鼓判を押すように話すのだが、時よりリサは父の壮一郎が怪獣と格闘する
夢を見た。
 深い青い空の下、アフリカの濃い黄色の大地に立つ父は、逞しく凛々しい男の姿で、今まで見たことのない父の姿だ。
リサは濃く深いアフリカの大地に思いを馳せた。
 母の眞由美は、総務省のキャリアで帰宅が深夜になることもしばしばで、リサが物心ついてから両親とともに過ごした時間は数えられる程度だ。
 母の眞由美とベルギーから東京に戻ってからは祖母の、のりこに育てられたようなものだ。
クラスの子が、両親といっしょに、どこどこへ行くとか行ったとかという話を聞くのに、うんざりしていた。
尋ねられるのには、それ以上にうんざりしていた。



 リサが、優平がシェアハウスを出て行った夜の事や、田口が何度かヴェニス・ビーチまでリサを訪ねて来た事などに思い耽りながらサイドウォークをヴェニスに向かって歩いている頃、一台のミントグリーンに塗られた1978年製ダッジ・マグナムGTが、リサの住むシェアハウスの前に、グオーという音を轟かせて停まった。
 

決勝ファステストラップ - Hinna

2019/03/14 (Thu) 00:14:00

今シーズンから、決勝ファステストラップに1点が与えられる事となったようです?! これは1年間見ていたい問題になりましたね・・まぁ来年も同様ならば、その時は!!

勝利の女神は“川本氏”に微笑む!! - Hinna

2018/12/01 (Sat) 14:52:01

 1987年は中嶋悟がロータス・ホンダでF1デビューした年。マンセル、ピケ、セナ、中嶋悟・・・ 誰が優勝するかビールを賭けて遊んでいた。場所は麹町“WORLD”のカウンター。マルさん、戸辺ちゃん、八谷、一夫、僕、神山君、新井君あたり・・・

WORLD を閉店して 1990年から F1 QUIZ GP がスタート。チャンピオンシップとして1年を戦う難しさと楽しみを知ってしまった?!

 川本博、彼が初めてチャンピオンになったのは 2005年。1991年から参加しているので、初優勝までには時間がかかったことになるけれど、そこからが強くそして持続している。
 7回目のチャンピオン!! 悔しいが圧倒的と言える成績だと思う。シューマッハと同数、これもまたなぜか悔しい・・・ちなみにター助は5回チャンピオンになっている。こちらはハミルトンと同数?!

 最終戦まで3人に優勝の可能性があった 2018年 F1 QUIZ GP 。 最終結果 ; 1位ヒロコ 94点 2位サチ 93点 3位の八谷 92点。思えば昨年も1位僕と2位ハッチの差は1点。ついでに3年前1位ター助と2位ハッチの差は0点。そのため優勝回数の差が勝敗を左右した・・・

 さてさてまだまだ書き続けたい気分だけど、この辺に。長文にお付き合い感謝します!! 最後に、川本君優勝おめでとう!!! そしてみんな、来年も楽しみましょう!!!        by Hinna

ダイブ・バー No.24 - Hacchi-

2018/11/11 (Sun) 07:49:40

 「話は、ちょっとぼくがこっちに来る前に戻るんだけど」 というと、田口は、渡米する前の出来事をぽつぽつと語りだした。


 60年代後半から70年代半ばまでのボーリングブームが去ってしばらくし、80年代後半に空前のバブル期に突入た。
 好景気に沸く日本で、田口の所属する初台ボールも、もれなく客足が戻って来ていたのも束の間、90年代半ばに、バブルが弾け、お祭り騒ぎも終わると、客足は目に見えて減っていった。
 金曜の夜だというのに、初台ボールは閑古鳥が鳴いていた。
 ボーリングボールを磨きながら、そろそろ潮時だなと、田口は、レーンからレーンを見やり、意を決したかのように、一度頷くと、いっそうタオルに力を込めボールを磨いた。


 田口が、父の茂と母の美奈子の前で、改まってアメリカに玉突修行に出る云々を語ったとき、父の茂は、腕を組んだまま、頭髪の後退により広くなった額の左上部に青筋をたて、しばらく田口を見つめると、「球ころがしの次が、玉突きか⁉ それとも何かの冗談か⁉ だいたい30も過ぎた大の男が・・・」 と、次に出る言葉を飲み込んだまま、あきれたように首を振る。 
すかさず母の美奈子が、宥めるように、「まあ~まあ~ お父さん、了は了成りに、考えての事だから」 と、田口を見つめると、少し悲しそうな表情で微笑んだ。
 田口は、子供のころから我が親とはいえ、どうもこの夫婦は、いちいち芝居がかっているような気がしてならないと思っていた。

 田口の出発の日、茂は、なんやかんや言っても我が子だ。
息子の旅立ちをかあさんといっしょに見送らねばなるまいと、退職金をはたいて手に入れた念願の “いつかはクラウン” トヨタクラウン・ロイヤルサルーンGを、朝から洗車し、念入りにワックスをかけていた。
それを居間の窓から見ていた田口の姉で、出戻りの遥子は、「なんだかんだ言って、母さんも父さんも、了には、あまいんだから」 と、やれやれとばかりに、寝起きの頭髪をかきあげ、自室に戻り、すぐに出てくると、「これ、国際電話代。 あんた、これで週一は、家に電話しなさいよ! そうじゃないと、母さん心配するから。 わかった?」 と、アメリカドルの札束を了に差し出した。
「あねき、悪いね」 と、田口は、ドル紙幣を拝むように受け取った。
「あー 気にしないで。 元旦那が置いてったやつだから。 あんたそれより、ヤンキーには、負けちゃだめよ。 いいね!」 と、了を一睨みすると、自室に戻って行った。
 遥子の前夫は、マサチューセッツ州出身の証券マンである。
二回りも若い子を目黒のワンルームマンションに囲っていたのが、遥子にばれ、離婚したのは、一昨年のおしつまる年の瀬だった。
 あねきは、まだ元旦那のこと引きずっているのかなあと、思いながら、あねきー 負けないよ! と、田口は心に誓った。

 空港に着くと、美奈子は、茂がトイレに行っているすきに、「はい、餞別。 お父さんには内緒よ」 と、大枚を田口の手に握らせた。
田口は、少し照れながら、「悪いね母さん」 と、素早く、トラベラーズポシェットにしまった。
茂は茂で、「かあさんもトイレに行った方がいいぞ」 と、なかば強引に美奈子をトイレに追いやると、「とっとけ。 母さんには内緒だぞ」 と、大枚の入った封筒を了の胸に押し付けた。
田口は、頭を掻きながら、「どうも」 と、ぼそっと言った。
 それから茂は、一枚の古ぼけた絵葉書を田口に渡すと、「なにか困ったことがあったら、彼を訪ねてみろ。 彼は、戦後GHQの職員だったものだ。 きっと、助けてくれるはずだ」
 田口は、古ぼけた絵葉書の写真を見た。
それは、どこかの公園らしく、噴水広場を中心に、樹木がそれを囲むように生い茂り、ひときわ目立つ重厚な石造建築物が、異彩を放っていた。

ダイブ・バー No.23 - Hacchi-

2018/10/08 (Mon) 09:18:39

 田口は今、優平とラグナビーチ辺でコーヒーブレイクしているので、これから優平といっしょにベニスに来るという。
それは、まるで近所の酒屋まで来たから、ついでにちょっと寄っていくといった、気軽さだった。

 リサは、そろそろ田口が優平を伴って来る頃だろうと、思っていた。
 リサが、昨年の9月に、サンタモニカ・カレッジへ入学して間もなく、田口が突然にリサを尋ねて来たことがあった。
 その時は、オーシャンフロント通りに建つ、海の見えるレストランで、目の飛び出しそうなほどの値段のシーフードパスタと白ワインをごちそうになり、お互いの近況を報告しあったり、他愛もない話を交わしただけだった。

 そもそも、リサと田口は、以前の留学の時に一度、優平を介して会ったことがあるだけだった。

 次に田口がリサを尋ねて来たのが、昨年の感謝祭の前週の昼過ぎだった。
 前回同様に、何の前触れもなく、突然連絡してきて、今、近くまで来たのでコーヒーでも飲み行こうと田口は言うと、リサの返答も待たずに、直ぐに迎えに来るという。
 相変わらずゴーイングマイウェイな人だなと、リサは、苦笑いしながら支度していると、田口のミントグリーンのダッチがシェアハウスの前に、グオーという音を轟かせて停まるのが、通りに面したリビングの窓から見えた。

 レドンドビーチのオーガニックを売りにしてるコーヒーショップの窓側の席に着き、バナナマフィンを一口食べてコーヒーを啜り、満足そうに頷くと、田口は、賭けビリヤードをしながらアメリカ中の街を旅していた若い頃をぽつぽつと語った。
 「別段、映画“ハスラー”に影響されたわけじゃないけど、何かアメリカで勝負してやろうと思ってさ、キュー・スティック持って飛行機に飛び乗り、ロサンジェルスに着いたら、バスがストライキしてて、空港の外では、タクシー待ちやらで長蛇の列が出来ててまいっちゃった」 と、田口はちょっと苦笑して頭を一つ叩いた。
 「それは、アンラッキーでしたね。 それでどうしたんですか?」
 「それで、どうしたものかと思って、外の喫煙所でタバコ吸ってたら、日本人ですか? と、声をかけてきた人がいたの。 それが結構流暢な日本語を話す白人でね。 日本人の奥さんが帰省から帰って来るので、空港に迎えに来たというの。 そこに彼の日本人の奥さんが到着して、それで乗せてくれるというので、ダウンタウンで降ろしてもらったんだ」
 「へ~ ついてましたね。 でも、アメリカでは、よくあることですよね」 
 「そう ついてたし、よくあることだよね。 でも、そのときのボクは、初めてのアメリカで不安だったし、ぼくの英語たるや、ディスイズアペン、レベルだったし、異国で親切にしてもらって、しかも、何かあったら電話してと、番号までいただいて、それはもう感動もんよ」 と、田口は、その時のことを思い出したようで、少し目を潤ませていた。
 田口は目を細め、しばらく海を眺めていた。
  
 それから、田口は唐突に奇妙な話を語りだした。
 

日本GP - Hinna

2018/10/05 (Fri) 01:08:34

2018年のF1GPも終盤戦。ロシアGPから連戦で鈴鹿へ。とてもせわしない感じがするなぁ。まぁ他人のふんどしでQUIZをしてるんで我慢するかぁ・・・
日本GPのあとは4戦。次のアメリカとメキシコが連戦。厳しいなぁ最後まで・・息切れしないで楽しみましょう!!!
今月もライブしてます。今月は行徳も一人で演ってます。10月8日(月) 行徳落陽 20時半~ 24日(水) 小石川 BAR MY PLACE 19時半~ 時間を何とかして遊びに是非!!

【ダイブバー No.21~22】あらすじ - Hacchi-

2018/09/25 (Tue) 08:52:04

【ダイブバー No.21~22】  2010年6月
“ スペースクッキーでボードウォーク ”

 夏休みに入ったサンタモニカ・カレッジのキャンパスは、閑散としていた。 
それでも、南カリフォルニアの夏の日差しを楽しむかのように、芝生で寛いでいる学生をあちこちで見かける。 リサは、コーセア・スタジアムの400mトラックをハイペースで4周走った。 
タイムは5分を少し超えた。 
高校時代のベストタイムには、到底及ばないが、悪くない。 
その後、隣にあるスイムセンターに向かう。
顔見知りのラテン系アメリカ人の警備員と挨拶を交わし、50mプールをクロールでゆったりと、4往復してクールダウン。
 トラックを走るのもプールで泳ぐのも、面倒な手続きも無く、気ままに出入り出来る。
これが日本だったらと思うと、リサは、ちょっと憂鬱になる。
 適当な木陰の芝生に座り、パイプに一つまみのマリファナ、ブルードリーミングを詰める。
草の強烈な香りが鼻をつんつんと刺激する。
その香りを楽しんだ後、軽く一服吸い、ゆっくりと煙を南カリフォルニアの青い空に向け吐く。
そして良く冷えた水筒の水を飲む。
最高! と心の中で叫ぶ。
 ゆっくりと深い呼吸を繰り返しながら、一つ一つの筋肉と会話するように時間をかけてストレッチする。
これほどの崇高な一時が他にあるのだろうか。
エクササイズ後に軽くマリファナを吸ってからのストレッチ。
最高の組み合わせだわ、と恍惚感に酔う。
 すっきりと心身ともにほぐれたリサは、サンタモニカ・カレッジを後にし、足取りも軽く、ピコ・ブールヴァドをビーチに向け歩く。
ビーチに着いて、ボードウォークをなんとなくヴェニス方向へ歩く。 
 一人のアフリカ系アメリカ人の若者に目を止めた。
彼は所在なく、ボードウォークの脇の砂浜に座っている。 
マリファナでハイに成っているのか、他のドラッグでストーンドしてるのか、目は虚ろで、どこかに飛んでいる。

 ふと、3週間前に、優平がシェハウスから出て行った日の出来事を思い浮かべる。

 その日、スーパーマーケットのヴォンズで、声をかけた一人旅の日本人女の子にマリファナを勧めた。
すると、二つ返事で乗ってきた。
 リサは、すらりと背が高く、八頭身美人で、水泳と陸上を子供の頃から続けているので、彼女の身体は、アスリートの持つ肉体美と、女性らしいほどよいカーヴを持ち合わせており、大抵の男どもは振り返るし、女性にも好感を持たれるので、リサに誘われてノーという人はまれだ。
それが、たとえ警戒心が強く、マリファナにネガティブな印象を抱いている日本の女性でも例外ではないのだ。

 家がここから近いからと、彼女をシェアハウスに招いた。
素敵な家ですねと、彼女は携帯で写真を撮りまくっていた。
タバコは吸ったことがないというので、ハウスメートのボビーが作った、マリファナバター入りのクッキーを半分試させた。
 食べて、30分程したころだった。
その女の子、名はアヤカといったか。
吐き気がするというので、大丈夫、それは普通の反応で、慣れていない物が胃に入ってきたので、それを吐き出そうとしているのよ。
そこを少し耐えて、しばらくすると楽になって来るからと、説き伏せたのだが、彼女いきなり、ソファの前のテーブルに吐しゃ物をまき散らしたのだ。
その後、痙攣か何かわからないけど、ぴくぴくと顔を引き攣らせたので、あわてた。
大丈夫? と彼女に声をかけるが、ソファでぴくぴくしてるばかりで、答えてくれない。
えー 何よこの子、まさか小麦アレルギーか何かなの? 
救急車呼ぶ⁉ 
でもいくらカリフォルニアとはいえ、マリファナは非合法だし、とんでもないトラブル抱えちゃう⁉ とプチパニック。 
でも人の命には変えられない。
手遅れになる前にと、携帯電話を手にしてたとき、そこへ、タイミング良く、ハウスメイトの一人である、マリアナが帰宅した。
 オー、神様仏様マリアナ様! 
なんという奇跡的なタイミング。
彼女は看護師なのだ。

 ドアを開けて、入ってきたマリアナは、鼻をひくつかせると、顔をしかめながら、「なに、この匂いは?」 とリサを見てから、ソファーに倒れて、ぴくぴくしている女の子を見ると、側に行き、「どうしたのこの子?」 とやけに落ち着いて、リサに尋ねた。
 リサは、アヤカがマリファナ入りクッキーを半分食べた30分後に吐き、その後、痙攣か何かが始まったところに、マリアナが帰宅したことを早口に説明した。
 「あーそう。 わかったわ」 というと、顔を歪め、「とりあえず、そのテーブルの吐しゃ物を片付けようか」 というと、オープンキッチンの方へ行き、使い捨てビニール手袋、ペーパータオルとプラスチックの袋を持ってきて、
テーブルを掃除しだした。
 落ち着き払って掃除しているマリアナに、ちょっといらつきながら、「ねえ、マリアナ。 この子ぴくぴくしてるけど、大丈夫なの?」
 「えっ⁉ あー大丈夫だと思う。 時期に治まるわよ。 そうね、舌噛むといけないから念のため、タオルでも口の中に突っ込んでおいて」 というと、吐しゃ物の入ったプラスチックの袋を持ってドアを開け外に出た。
 えっ、タオル⁉ バスタオルじゃ大きすぎるだろうしと、辺りを見渡すと、キッチンカウンターの上にあるキッチンタオルが目に入った。
これだ! と、それを取り、ぴくぴくしているアヤカの顎を左手で押さえながら、右手に持ったキッチンタオルを彼女の口に押し込んだ。
これでひと先ずは安心か⁉ と、ぴくぴくしているアヤカを見下ろしながら、仁王立ちに腕組みしているところへ、ギターを背負った優平が帰ってきた。
 ギターを背負ったまま、心配そうに、アヤカの側にいるゆうちゃんに、事の顛末を語った。
 ゆうちゃんは、冷ややかな目を向けると、誰彼構わず日本人と見るや、マリファナを勧めるのはやめろと言った。
さらに、リサのやってることは、質の悪い新興宗教かなにかの勧誘と変らないとまで。
これには、カチンときた。
なんですって⁉ 私はね、マリファナのすばらしさをわかってほしいと、善意で、良かれと思って・・・ とかなんとか言ったと思う。
実のところは、興奮しすぎてその時の口論は、あまり覚えていない。
ただ、ゆうちゃんとの口論中に、アヤカは回復し、マリアナは一人掛けソファで、微笑みながら紙巻きマリファナを吸っていたこと、そしてその夜、ゆうちゃんが出て行ったことは、覚えている。

 そんな風に、ボードウォークに立ったまま、物思いに耽っていたとき、携帯電話の呼び鈴が鳴った。

 田口からだ。
 

【ダイブバー No.16~20】 あらすじ - Hacchi-

2018/09/13 (Thu) 08:27:29

【ダイブバー No.16~20】  2010年6月
 ”ゴールドラッシュのあとで”

 優平は、大学を卒業すると、リサの居るロサンジェルスにやって来た。
 とりあえず、リサの住む共同ハウスに居候していたが、しばらくして、リサから逃げるようにサンディエゴにやって来た。 

 そしてダウンタウンは、ガスランプクォータに建つ、ホステルサンディエゴに宿泊して、三週間になろうとしていた。

 ラカエルとディエゴの作ったエンジェルストランペット・ティーの後遺症も癒えたころ、優平がUCSDの留学生のころに、バイトしていた寿司レストランWABISABIのオーナーである田口と会うことになった。
田口に会うのは、3年ぶりになる。 
 どうしてか、優平は田口に気に入れられ、なにか事あるごとに誘われた。 
 田口は、様々なスポーツやゲームを楽しんでいて、交流も広く、アメリカ社会に受け入れられていた。 当初優平は、田口という男は、どこまで、本気で、どこまで、冗談なのか、わからない男だなと、思っていた。 どこか映画、『日本一シリーズ』の主人公扮する、植木等のような人だと。  
田口は、とても60代には、見えず、若々しく、少し小太り気味だが、身体はしなやかでばねがある。 様々なスポーツやゲームに精通していて、多芸に富んだ人物であると、優平は、ひそかに尊敬の念を抱いていた。

 ある夜のこと、寿司レストランWABISABIのシフトが終わった優平を田口が、近所のバーに誘った。
バーに入ると右手の大きなバーカウンターに、数人の常連らしき客が、ストゥールに座り、ビールを飲みながら談笑していた。
 店の奥には、ビリヤードのテーブルが有り、キューボールがボールを打つ小気味よい音を奏でていた。
 田口は、また顔見知りと挨拶を交わし、優平を紹介した。
 それから田口は、チョークで YUHEI そして、次に RYO と、名前を書いた。
 ゲームに勝った者が、黒板に書かれた挑戦者と順番にゲームする。
 優平の番が来た。
 初心者の優平には、とても勝ち目のない相手だった。
 そして田口の番がやって来た。
 田口は、顔見知りのその相手に、$20の賭けを申し込み了承された。
 田口のショットは冴え、相手に付け入る隙を与えなかった。
 その後、閉店まで田口は、勝ち続け、相当の掛け金を得たが、それをチップとし、バーカウンターの上に置いて店を出た。

 優平はその夜、田口の多芸多才な一面を見せつけられた。

 聞けば、田口は以前に、流しのハスラーとして、街から街を渡り歩いていたことがあるという。
 

 優平が、ホステルサンディエゴの前で、田口の到着を待っていると、大排気量特有の野太いエンジン音と排気音を轟かせながら、一台のミントグリーンに塗られた1978年製ダッジ・マグナムGTがやってくるのが見えた。
 フロントガラスの先に田口の人懐っこい笑顔が見えるようだ。
 畳、二畳はあろうかというボンネットから、ゆっくりと車寄せに進入してくる長い胴体のダッジ・マグナムGTは、これでもその時代のアメリカでは、ミッドサイズと呼ばれていた車だ。
 ミントグリーンのボディが南カリフォルニアの青い空に良く似合っている。
 そして優平の前で停まった。
 
 田口だ。
 3年ぶりに会う田口は、以前よりも若返ったように見える。
 田口は、運転席の窓からよく日に焼けた腕を伸ばし、優平と握手を交わし、「やあ、優平く~ん。 お久しぶり~ 元気そうね。 とにかく乗って」 といって、クリーム色の革張りのシートを軽く叩くと、細い目をさらに細め、「どうこの車? 良いでしょ⁉」 と、ミントグリーンのステアリングを撫でた。
 優平は、確かめるように車内を見回すと、頷きながら、「良いですね。 ダッチ・マグナムGT 6.6L V8 ですね⁉」 と、自信満々の微笑を浮かべ、田口の方に顔を向けた。
 「さすが優平君。 御名答!」 と言い、軽くエンジンを空ぶかして、ギアをドライブに入れると、車重1.7トンのダッジ・マグナムは、グオーという音ともにゆっくりと動きだした。
 
 二人は、お互いの近況報告を仕合ながら、ラ・ホヤに向け、FW5を北上する。
田口は最近、SUP(スタンドアップパドル・サーフィン)に、はまってるのだという。
田口が言うには、なんでも、海でサーフィンするというよりも、ミッションベイや湖などで、のんびりと水上をパドルしてると、色々なものが見えるのだという。
 田口は、一通りSUPの魅力を優平に語り、満足したようだ。

 カーラジオ流れて来る曲は、どれも70年代の曲ばかりだ。 
先ほど、アメリカの『ヴェンチュラ・ハイウェイ』 から、ドゥビー・ブラザースの『リッスン・トゥ・ザ・ミュージック』 に、曲が変わったばかりだ。
 優平が、車も70年代ならラジオから流れてくる曲も70年代かよ! と、突っ込もうとした矢先、田口が、
指でステアリングを叩きながら、曲のサビに合わせ、ノリノリで歌いだしたので、優平も一緒になって歌いだした。

 優平の父である響司が、ある種のレコード収集家で、オーディオ・ルームには、1000枚は、超えるレコードが、壁一面に、左から、アルファベット順に並べられている。
 優平が、中学になると、父、響司から、高価なオーディオ・システムやレコードを、大事に扱うことを条件に、自由にレコードを聴く許しがでた。
 それを機に、優平は、とりあえず、Aの棚から聴き始めた。
 ABBA~AC/DC…… ときて、当時の優平に刺激を与えた一つが、AMERICAのファーストアルバム、アルバム名も、AMERICAのジャケット写真と、アルバム中5曲目の『ア・ホース・ウィズ・ノー・ネーム』であった。
 それは、3人のインディアンが描かれた壁を背に、長髪の3人の若者が、寛いでいる写真だ。
そのジャケットを見ながら、『ア・ホース・ウィズ・ノー・ネーム』が、流れて来ると、優平は、なにか不思議な懐かしさみたいなものがこみ上げてくることに、違和感を覚えた。

 曲が終わり、一旦コマーシャルになると、田口が、ちらっと、優平の方を見ると、「そういえば、優平君、アメリカのファースト・アルバムが妙に気に入っているとかなんとかって、言ってたよね⁉」 と、尋ねた。
 優平は、ちょっと驚いたような顔をしてから、「っていうか、なんかこう、デジャヴュ的な物を感じるんですよねー」 と、優平は、遠くを見つめるような眼差しを田口に向けた。
  この男、もしかしたら他人の心が読めるのか!?

 「さっき流れた、『リッスン・トゥ・ザ・ミュージック』が、入ってるドゥビーの二枚目のアルバム、『トゥールーズ・ストリート』のジャケットと、アメリカのファースト・アルバム、『アメリカ』って、なんとなく雰囲気似てるよね~」 と、田口が、ちょっとしなを作って、優平の方をちらっと見る。
 優平は、以前から気になっていた田口の“しな”については、あえて考えないようにして、『トゥールーズ・ストリート』の、ジャケットを思い浮かべていた。
 「確かに、メンバーを撮った写真を中心に置いて、それを茶系色で囲ってる点は、似てるけど、それは多分に、同年代に作られたので、当時のスタイルみたいなものから来るんじゃないですかねー」
 田口は、「ふむ」と言って、少し首を傾げた。
 「そういえば、トゥールーズ・ストリートって、どこだろうね? ほら、きっとLAのどこかよ!」と、田口は少し興奮気味に言うと、携帯を右手に持ち、どこかに電話しだした。

 「エリー! 今、事務所かな⁉ ・・・ グッ! あのさ、トゥールーズ・ストリートって、どこにあるか調べてくれる?」

 エリーとは、田口の奥さんであり、レストランの経営パートナーでもある。 
名は、佳代というのだが、本人曰く、サンディエゴに居を構えたのを機に、こんな古風な名前は、昔から大嫌いだったので、せっかくアメリカに住んで居るのだから、こちら風の名前で呼んでほしいと、田口に頼み、では、エリーなんかどうだい? と、田口が言うと、佳代が、エリー と、うっとりするように、その名を声に出し、続いて、気に入ったわ。 と、目を輝かせた。

 それ以来、比較的控えめだった性格も、積極的な社交性へと、変貌を遂げたのそうだ。

 優平は、この夫婦を見てると、何か、夫婦漫才を見ているみたいだなと思って、いつも朗らかな気分になる。

 左腕でハンドルを握り、右手に携帯を持っている田口が突然、「へっ!?」 と、素っ頓狂な声を上げ、「そんなにあるんだ! で、LAの辺りにもある?」 と、言うと、田口は、器用にハンドルを持った左手の手のひらをハンドルに乗せたまま、中指で方向指示器のレバーを下げ、左レーンに車線を変えた。
「コロナ!?・・・ ハンティントンから東に30分ね。・・・ オーケー ・・・ ありがとうエリー愛してるよ!」 と早口に言い、田口は通話を切った。

 「トゥールーズ・ストリートって、アメリカ中にあるんだって」
 「そうでしょうね」
 「それで、とりあえず行ってみない?」
 「えっ? とりあえずって、コロナへですか?」
 「そう。 ちょっとドライヴがてら」 と、田口は、優平を流し目で見る。
 「ドライヴは構いませんが、でも、あのジャケット写真は、バンドメンバーが、ちょっと怪しげな部屋に居るところを撮ったやつですよね」 と、優平は、訝し気に田口を見る。
 田口は、ラジオから流れるイーグルスの『テイク・イット・トゥ・ザ・リミット』 の曲に合わせ、ハンドルを指で叩きながらリズムを取り、陽気に歌っている。
 「まあ、優平君。 そんな細かいところは、置いといて、先ずは、レッツ・ドゥビー!」 と言って、紙巻きマリファナを優平に差し出した。
 優平は、それを受け取ると、鼻先に持って行き、匂いを嗅ぐと、しばし、目を閉じ、匂いを堪能するかのように、ゆっくりと息を吐いた。
 「この柑橘系の匂いは、レモンヘイズか何かですか?」
 「ハズレー。 ジャックリッパーといって、ハイTHCだから、気をつけてね」
 優平は、頷くと、左手に持った、紙巻きマリファナに火をつけた。 

 ダッジ・マグナムGTは、70年代車とは、思えないくらい快調に、FW5を北上し、エンスィニータスを過ぎ、
カールスバッドに入ろうとしていた。
 ラジオからは、ニール・ヤングの『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』 が、流れている。
 きっちりと、マリファナでハイになった、優平と田口は、暫し曲の世界に浸っていた。

 バティキースト・ラグーンから、二羽のペリカンが、飛び立ったところを車窓から目で追っていた優平は、初めてそれを見たかのように、目を丸くしていた。
 異様に長いくちばしは、付け根の下の部分が垂れ下がっていて不気味だ。
 それに鳥にしては、とてつもなく大きい。
 なんだか恐竜に近いものなのではなかろうか。 
 そういえば、ジュラシックパークに居そうではないか!? 

 田口が、『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』について語っている。
 「この曲は、1970年にリリースされたのだけど、最初、ゴールドラッシュの後のカリフォルニアの歌かと思っていたら、全然違うのよね。
 ほら、ちょうど、ここの二番の歌詞なんか、核戦争が起きたという、想定だと思うし、三番の歌詞なんか、完全に、ノアの箱舟だしね。
 やっぱりあの頃は、ヴェトナム戦争は、長引いて泥沼だったし、内戦は、世界中であったし、それに米ソ冷戦時代で、核実験なんかしょっちゅうやってたしね。
 当時20代のニール・ヤングは、相当憂えていたんだと思うよ」 

 田口は、ラジオから流れている曲の一節をいっしょに歌いだした。
 I was thinking about what a friend had said I was hoping it was a lie ♪ 

 優平は、田口の話している内容は、理解して、相槌を打っているのだが、意識の中心は、ペリカンと先ほどから流れている曲に奪われていた。
 ペリカンの飛ぶ姿と、『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』 が、見事にシンクロして、まるでそれは、映画か何かのようだ。
それに、なんだこの懐かしいような感覚、以前に同様の感情を抱いた記憶があるぞ。
 田口は、助手席でストーンドしている優平を横目で、ちらちら見ると、にやりとし、叫ぶように優平の名を呼んだ。
 「あれ~ 優平君。
 ストーンド⁉ 
 いいな、いいなあ。 
 ボクなんか、しばらく “ぶっ飛んだ” って感じないもんね。
 まあ、しょうがないっちゃ、しょうがないよね。
 もう40年もマリファナ吸ってれば、薬剤耐性ってやつよね」 と、田口は、下唇を突き出して、横目で優平を睨んだ。

 「そういえば、この前、エリーが真顔で、あなたの体臭って、ちょっとマリファナ臭いわよ。 って、言ってたもんね」 と、田口は、少し自慢げに言った。
 優平は、その光景が、目に浮かび、急におかしくなって吹き出し、けらけらと腹を抱えながら笑いだした。
 「え~ なに~ 優平君たらずる~い。 そんなにストーンドなの~」 と、田口は、言いながら、運転席で、身体を数回捻り、不満の態度を示した。
 それがまた優平の笑いの虫をさらに刺激し、「わははは~ あ~苦しい わははは~」 と、両足をばたばたとした。

 ラジオからは、ロギンズ&メッシーナの『ユア・ママ・ドント・ダンス』 が、軽快に流れていた。


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